燃料電池車 先頭を走るトヨタとホンダ

 今やクリーンカーの切り札とも言われる燃料電池車。水素を燃料として車を動かし,排出するのは水のみ。環境への優しさという点で究極とも言える車である。燃料電池車が普及すれば,車による排ガス問題などの環境問題が一気に解決するかもしれない。研究開発もかなり進んできており,実用化も見えてきている。決して夢物語の中の車ではない。

 燃料電池の研究開発の歴史は古く,1842年に英国のグローブ卿が発表した実験結果が燃料電池の最初の発明と言われている。その後綿々と開発は続けられてきたが,1980年代にカナダのベンチャー企業Ballard Power Systems社が「固体高分子型燃料電池」の改良に成功したことをきっかけに,燃料電池の研究開発は一気に盛り上がった。そして1994年,Ballard社からの燃料電池の供給を受けて,ドイツDaimler Benz社(当時)が初めて燃料電池車の試作車を発表した。それに遅れること3年,1997年には日本でもトヨタ自動車が同様の試作車を発表,2002年にはトヨタとホンダの燃料電池車市販車第1号が日本政府に納入された。

 しかし,燃料電池車の普及までのハードルはまだ高い。例えばコストの問題。現在,各社が出している燃料電池車の価格は1台数千万円から数億円のオーダーであると言われる。燃料電池車の価格を押し上げる主な部品は燃料電池のスタックだ。その中で触媒に使われている白金などが価格を大きく上げてしまう。また,低温時の起動など,自動車として機能するための課題もまだある。さらに,燃料電池車を動かすための水素をどうやって供給していくかというインフラ面の問題もある。水素ステーションの検証実験なども始まっているが,燃料電池車の実際の普及が見えてこない限り,水素ステーションの実用化は難しいとも言われている。

http://ma.nikkeibp.co.jp/ace/guests/articles/2007/08/0709a004.shtml