引用

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今週のコラム「炭素14が教えてくれること」
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 だいぶ前に本コラムで炭素14を使った年代測定法についてご紹介したのを覚
えていらっしゃるでしょうか。先日番組を観たところ,この測定法によって地
球の歴史についての大きな発見があったそうです。さらにこの炭素14,他にも
色々と活用され始めているようです。

 まず炭素14年代測定法とはどういうものか。炭素14は地球の大気に一定の濃
度で含まれており,呼吸をする生物の体の中にも存在しています。しかし,こ
炭素14は,非常に不安定で時間の経過とともに窒素に変わるため,装置を使
い減り具合を調べることでその年代を特定するのだそうです。

 例えば,生きている樹木の内部にある炭素14の濃度を1とします。生きてい
る間は外から炭素14を取り込むので量は変わりませんが,枯れると取り込めな
くなり,5,730年経つと量が半分に減る。その後も5,730年毎に半分ずつ減って
いくので,この減り方によって年代が判明できるというのです。

 そして大きな発見とは,太古の昔,南極にある世界最大のロス棚氷が一部崩
壊したことで世界の海水面が3mも上昇したそうですが,この崩壊がこれまで約
1万5000年前に起こったとされていたところ,精度が上がった最近の炭素14
代測定法によって実際は約5,000年前だったというのです。実は1万年も誤差が
あったと話題になったようです。

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 また炭素14が活用されようとしているのが富士山の噴火史です。これまで噴
火の調査は,陸上の地層調査が主でした。そこで昨年,麓にある湖の底の堆積
物を採取して陸上の地層と比べた結果,陸上の地層からはおよそ3,000年前に
1度だけと思われていた噴火が,湖底の地層によって同時期に数回にわたって
噴火を繰り替えしていたことがわかりました。

 そして今後,炭素14による詳しい年代測定が行なわれて行くようですが,噴
火の頻度や周期がさらに明らかになれば,富士山噴火の予測に大いに生かされ
るものと期待が高まっています。

 さらに炭素14は,アメリカでがん治療の現場に活用されています。抗がん剤
は,成分ががん細胞のDNAに結びつくかどうかで効力があるかが決まるのだそ
うですが,患者によって個人差があるため,抗がん剤を実際に投与するまで効
力はわからないとのこと。そこで炭素14を使って投与する前に効力があるかを
調べようというのです。

 その方法は,まず抗がん剤に含まれている炭素12を炭素14に置き換えます。
そして実際の治療で使う1/100の量,副作用の出ない量を患者に投与。翌日,
血液を採取し,がん細胞のDNAに炭素14がどれだけ結びついているか効果を調
べるというもの。この方法が確立されれば,最短2日で患者と抗がん剤の相性
がわかり,効果の上がらない治療に苦しむ時間を減らすことができるとされて
います。

 炭素14は,この他にも生物の動態調査,バイオロギングにも活用されていま
す。今後さらに様々な分野に活用され,私たちが知らなかったことを色々と教
えてくれることでしょう。【愛】

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